相続手続きの流れ

相続は、被相続人(亡くなられた方のことをいいます。)の死亡したことから始まり、その後、様々な流れで進んでいきます。以下では、各相続手続きの内容をご説明します。

相続手続きのフローチャート

遺言書の有無

被相続人が遺言書を作成しており、遺言書で遺産分割の内容や方法が定められている場合、原則として、遺産はその遺言書の内容に従って分割されます。そのため、被相続人が遺言書を作成しているかどうかを確認する必要があります。

ただし、遺言書が作成されている場合でも、相続人全員の合意があれば、遺言書とは異なる方法で分割することも可能となります。その場合、相続人全員で遺産分割協議をすることになります。

遺産分割協議

法定相続人の確定及び法定相続人の相続分の算定

遺言書が作成されていない場合、相続分は民法の定める割合によることになります。各相続人の相続分は以下のとおりとなります。

相続人の確定

  • 相続人が配偶者のみの場合

    相続人が配偶者以外にいない場合には、配偶者が被相続人の相続財産をすべて相続します。
    被相続人が亡くなられた場合に、自分の他に相続人がいるのかどうか知りたい、遺産の範囲を知りたいがどのように調査すればよいか分からない等、相続に関する不安やお悩みをお持ちの方は、当事務所長崎オフィスまでご相談ください。

  • 相続人が配偶者と子の場合

    相続人が配偶者と子の場合には、配偶者が2分の1、子が2分の1の割合で相続します。
    子が複数人いる場合には、子の相続分(2分の1)を子の人数で均等に分配することになります。
    養子は、縁組の日から、養親の嫡出子(婚姻中の夫婦間に生まれた子供のことです。)の身分を取得するため、養子縁組以降に相続が生じた場合には、嫡出子の相続分(2分の1)となります。
    普通養子(養子が実親との親子関係を存続したまま、新たに養親との親子関係をつくる養子縁組のことをいいます。)の場合、養子となっても実親との親族関係はなくならないことから、養親の相続人となるだけでなく、実親の相続人にもなります。

    なお、従来、非嫡出子(婚姻中でない男女間に生まれた子供のことです。)の相続分は嫡出子の相続分の2分の1とされていました。しかし、平成25年12月5日に民法が改正され、嫡出子と非嫡出子の相続分が同等になりました。
    被相続人が亡くなられた際、自分が相続人に該当するのか否か、相続人に該当するとしてどの程度の遺産を相続することができるのかなど、相続に関する不安や悩みをお持ちの方は、相続に関する案件に強い山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスまでご相談ください。

  • 相続人が配偶者と直系尊属の場合

    相続人が配偶者と直系尊属(父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族のことです。)の場合には、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1の割合で相続します。直系尊属が複数人いる場合には、直系尊属の相続分を直系尊属の人数で均等に分配することになります。

  • 相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合

    相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1の割合で相続します。兄弟姉妹が複数人いる場合には、兄弟姉妹の相続分(4分の1)を兄弟姉妹の人数で均等に分配することになります。
    なお、複数の兄弟姉妹のうち、被相続人と親の一方を共通にするだけの者がいる場合、その相続分は被相続人と両親を共通にする者の2分の1となります。
    すなわち、被相続人の元妻との間に子がおり、再婚相手との間にも子がいる場合、再婚相手の子らは両親を共通にする者にあたり、再婚相手の子と元妻の子とは、親の一方を共通する者にあたり、元妻の子の相続分は再婚相手の子の2分の1となります。

  • 相続人が子、直系尊属又は兄弟姉妹だけの場合

    相続人が子、直系尊属又は兄弟姉妹だけの場合、その者がすべて相続します。
    相続人が複数いる場合には、相続人の人数で均等に分配することになります。

なお、兄弟姉妹の場合のみ、被相続人と親の一方を共通にするだけの者の相続分は、被相続人と両親を共通にする者の2分の1となるのは上述の通りです。

遺産分割協議

遺言書が作成されていない場合や、遺言書が作成されていても相続人全員の合意がある場合には、遺言書とは異なる方法で分割することも可能となります。その場合、相続人全員で遺産分割協議をすることになります。
遺産分割とは、相続開始後に共同相続人の共同所有に属している相続財産を、各共同相続人に分配・分属させる手続きをいいます。
遺産分割は、相続人の協議で行うことができますが、相続人間で協議が整わない場合には、家庭裁判所において遺産分割調停・審判により解決を図ることになります。

  • 遺産分割協議とは

    遺産分割協議とは、相続開始後、共同相続人間の共同所有に属している遺産を、共同相続人全員の合意により分割する手続きをいいます。

  • 遺産分割の当事者

    遺産分割協議の当事者は、共同相続人、包括受遺者、相続分の譲受人となり、協議は当事者全員で合意する必要があり、当事者の一部を除外してなされた遺産分割協議は無効となります。
    当事者全員の合意がある限り、分割の内容は当事者で自由に定めるこ とができ、特定の相続人の取得分をゼロにすることも可能となりますし、分割の態様についても、現物分割(遺産をその形態を変えることなくそのまま各共同相続人に分配する方法をいいます。)、換価分割(遺産を金銭に換価し、その価値を分割する方法をいいます。)、代償分割(遺産の現物は共同相続人中の特定の一人又は数人に取得させ、その取得者に、現物を取得しなかった他の共同相続人に対する債務を負担させる方法をいいます。)等、自由な方法が可能となります。

  • 遺産分割の時期

    共同相続人は、いつでも、その協議で遺産の分割をすることができますが、遺言による分割禁止や家庭裁判所の分割禁止の審判があるとき等は、その期間中は分割協議をすることはできません。

  • 遺産分割の協議の方法

    遺産分割の協議については、共同相続人全員が一堂に会して協議することもできますし、手紙や電話等の通信手段を利用して協議することもできます。

  • 遺産分割協議書

    共同相続人間で遺産分割について合意ができた場合、多くの場合で遺産分割協議書が作成されます。共同相続人間で遺産分割の方法について合意がなされた証拠資料を作成しておかないと後日の紛争を招くおそれがあるだけでなく、分割した遺産の取得者が名義変更等をする際に必要な資料となることが多いからです。

遺産分割調停

  • 遺産分割調停とは

    遺産分割調停とは、被相続人が残した相続財産について、相続人間で協議がまとまらない場合や協議ができない場合に、裁判所に申し立てて解決を図る手続きです。

  • 遺産分割調停の手続

    遺産分割調停の手続きは裁判所において進められますが、あくまでも相続人間で遺産分割の方法を合意することを目的とした手続きであり、裁判所が遺産の分割方法を決定するということはありません。

  • 遺産分割協議との違い

    遺産分割調停では、裁判官と調停委員が中立的な立場でお互いの話を聞いて整理し、協議によって分割方法を定めることになりますが、調停委員が話し合いのあっせんをしてくれたり、合意が成立した場合に作成される調停調書の記載には確定した判決と同一の効力が認められることが遺産分割協議と異なります。

  • 遺産分割調停の流れ

    調停申立て
    遺産分割調停の申立ては、申立書を作成して、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所に提出する。遺産分割調停の申立人は、原則として共同相続人であるが、場合によっては包括受遺者や相続分の譲受人も申立人となります。

    調停手続き
    調停手続きは、裁判官及び家事調停委員で組織する調停委員会が実施し、調停委員会を組織する裁判官の指揮により、当事者その他関係者から事件の実情を聴取し、当事者の納得し得る解決方法を協議していくことになります。
    調停期日では、調停委員会が職権で事実の調査をし、必要と認める証拠調べをすることになっていますが、現実的には、当事者からの意見の聴取がメインとなります。

    調停手続きの終了
    調停期日において、当事者間で合意することができ、調停委員がその合意が相当であると認めて、これを調書に記載したときに調停が成立します。調停調書は確定した判決と同一の効力を有することになります。
    一方、調停期日において、当事者間に合意が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合には、調停委員会は、調停が成立しないものとして、家事調停事件は終了します。この場合、家事調停の申し立て時に、当該事項についての家事審判の申立てがあったものとみなされます。

    遺産分割審判

    なお、家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判をすることができます(調停に代わる審判といいます。)。

    調停に代わる審判
    家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件解決のため必要な審判をすることができ、これを調停に代わる審判といいます。
    調停に代わる審判の制度は、以下のような場合に活用することが想定されています。

    1. 調停で合意を成立させることは拒否するが、裁判所の判断には従うので審判が欲しいと主張する当事者がいる場合
    2. わずかな相違で合意ができない場合
    3. 積極的には協力しないが、反対まではしない当事者がいる場合
    4. 一方当事者が手続追行の意欲を失い、調停期日に出席しない当事者がいる場合

    調停に代わる審判が確定した場合には、確定した判決と同一の効力を有します。
    一方、調停に代わる審判には、告知を受けてから2週間以内に異議を申し立てることができ、適法な異議申立てがあった場合には、調停に代わる審判はその効力を失い、家事調停の申立ての時点において、当該事項について家事審判の申立てがあったものとみなされます。

遺産分割審判

  • 遺産分割審判とは

    遺産分割審判とは、裁判所が遺産分割の方法を決定する手続きです。調停が不成立で終了した場合には、調停の申立ての時に遺産分割の審判の申立てがあったものとみなされ、遺産分割事件は審判手続きに移行し、審判手続きが開始されます。なお、遺産分割調停をしないで遺産分割審判を申し立てることは可能であるが、実務上は、審判の申立ての後、調停手続から実施されることが多くなっています。

  • 審判手続き

    審判手続きでは、裁判所は、原則として当事者の陳述を聴取しなければ裁判をすることはできないとされており、陳述の聴取は審問(当事者が口頭で意見等を述べ、裁判官がそれを直接聞く手続きのことをいいます。)による方法等によって行われ、聴取方法が決まっているわけではありません。
    なお、調停手続の記録は当然に審判手続の記録となるわけではありませんが、裁判所による事実調査の対象となることによって、審判の資料となります。

  • 審判手続きの終了

    家庭裁判所において、当事者双方において十分な主張・反論の機会を与えたと判断した場合、相当の猶予期間をおいて審理を終結する日を定め、併せて審判の日を定めます。
    家庭裁判所の審判は、遺産分割に関する裁判所の終局的判断であり、通常は審判書を作成して、審判書の謄本を当事者に送達する方法で当事者に告知されることが多いです。
    家庭裁判所の審判の効力は、審判が当事者に告知されたときに生じ、即時抗告(家庭裁判所の審判に対する不服申立ての方法をいいます。)期間の満了(審判の告知を受けた日から2週間。)により確定します。

まとめ

遺産分割協議は、共同相続人間の協議で行うことができるが、共同相続人同士では感情的になり、協議がまとまらなかったり、遺産分割協議の当事者の範囲が分からない、遺産分割協議は整ったものの、遺産分割協議書の内容が不十分であり、うまく遺産の分配ができないなどの問題が生じることが多々あります。
遺産分割調停や遺産分割審判については、申立てをする家庭裁判所はどこか、申立てに必要な資料や費用、手続の進め方等について一定のルールがあります。
遺産分割協議や遺産分割調停・審判に関する不安やお悩みをお持ちの方は、山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスまでお気軽にご相談ください。